日脚伸ぶ少しゆっくり山歩き   藤村 詠悟

日脚伸ぶ少しゆっくり山歩き   藤村 詠悟 『季のことば』  一月下旬あたりの晩冬を言う季語が「日脚伸ぶ」である。最も日が短くなる冬至(十二月二十二日頃)の日没は午後四時半、日中の時間が最も長い夏至(六月二十一日頃)になると午後七時となる。半年で二時間半の差、つまり冬至から夏至にかけては一日ごとに約五十秒ずつ日が伸びて行く。  暮れから正月にかけてはあれやこれやあって、瞬く間に日が過ぎてしまう。ふと気がつけばもう一月も下旬になっている。会社勤めがあるわけではない、別にさしたる用事があるわけでもない年寄りでも、年末年始は慌ただしい。気ぜわしさから解放されて、ふと見回すと「そう言えばずいぶん日が長くなって来たなあ」と気がつく。  金沢文庫に住し散歩を日課にしている作者は、「今日は天気もいいし、ひとつ足を伸ばして称名寺の裏山にでも行ってみようか」と思う。「少しゆっくり山歩き」に日脚伸ぶの気分が遺憾なく表されている。(水)

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