泰然と高野槇立つ去年今年      高井 百子

泰然と高野槇立つ去年今年      高井 百子 『この一句』  私の知人は元旦に鎮守の社に出かけ、参拝した後に境内に立つ杉の巨木に頭を下げるのを習わしにしている。地域の世話役を務めていた祖父から「我が家では代々、あの杉に新年の挨拶をしてからお雑煮を頂いている」と聞かされていたそうだ。おそらく樹齢何百年という古い杉なのだろう。  この句の高野槇(こうやまき)は、作者によると埼玉県新座市野火止の平林寺にあり、樹齢は五百年だという。同じ「槇」の名がついても、幹や葉がくねっている柏槇(びゃくしん)とは違う種類らしく、事典類によると「まっすぐ立ち、横幅もある堂々たる樹形。高さ三十辰鯆兇垢發里癲廚覆匹箸△襦  大晦日から元旦へと時が流れていく「去年今年」。初詣に出かけた平林寺の暗闇に泰然と立つ大木を想像するだけで、身の引き締まる思いがする。高野槇の名は真言宗の霊山・高野山に多く生えているところに由来するという。元々が宗教的な謂れを持つ樹木なのである。毎年、平林寺へ初詣に行き、高野槇を見上げながら、新年の誓いを立てるような人がいるのではないだろうか。(恂)

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