独り居の老女の家に松飾り   井上 庄一郎

独り居の老女の家に松飾り   井上 庄一郎 『この一句』  知り合いというのではなく毎日の散歩か何かで通る道筋にある家だろう。覗くわけではないが何となく目を遣っているうちに、年取った婦人の独り住まいであることが自然に知れる。上品でなかなか気丈そうなおばあさんである。  いつも門前や塀の外をきれいに掃き清めている。垣間見える庭や家の佇まいからも女主人の清楚な暮らしぶりが判る。夜、家路を辿る道すがら、老女の家に明かりが灯っているのが見えると、人ごとながら安心する。  年が明けて、またその家の前を通りかかった。相変わらずひっそりとしているが、門柱には小さな門松がちゃんと立ててあった。「ああ、おばあさん無事に新年を迎えたな」と、我がことのように嬉しくなる。  いまや65歳以上が3千万人、国民の4人に1人が高齢者という状態。さらにこれから独居老人はますます増える。この句のように老女はまだいいが、老男はまことに危なっかしい。松を飾ることなど思いの外で、身の回りのことすらおぼつかなくなる。やはりカミさんには長生きして貰わねばと思う。(水)

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