どてら着る後ろ姿や百耕忌         高井 百子

どてら着る後ろ姿や百耕忌         高井 百子 『この一句』  忌日の句である。前書に「父の三十三回忌を前に」とあった。それによって作者がご自分の父上(俳号・百耕)の忌日を詠んだ、ということが分かる。「どてら」という冬の季語が入っているので季節もはっきりとしている。しかし読み手の知らない忌日の句はどうなのか、と思う人もいるに違いない。  忌日を詠む場合、「芭蕉忌」(時雨忌)、「子規忌」(糸瓜=へちま=忌)など、有名人のものに限るべきだ、という意見がある。しかしこの句を見て、必ずしもそうではない、と思った。どてらを着て背中を見せている百耕さん。洒脱な俳画を見るようで、なかなかの雰囲気を感ずることができる。  この句のイチ押しは「百耕」という俳号である。聞くところによると、父上は大学の教授として一つの専門分野を地道に耕し続けておられたという。そのことを知らなくても、一徹で重厚な人柄を感ずることができよう。どうやら忌日の句に相応しい俳号というものが、あるらしい。試みに歳時記などから俳号を選び、順に置き換えてみた。どてらの後ろ姿にぴったりの俳号は結局、見つからなかった。(恂)

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