五年経て株をふやして石蕗の花   大平 睦子

五年経て株をふやして石蕗の花   大平 睦子 『この一句』  ツワブキ(石蕗)は暖地の海岸などに生えているキク科の植物で、濃緑のつやつやした厚ぼったい葉が美しく、冬になると広がった葉の真ん中から5、60センチの茎を伸ばし、先端に黄色い菊のような花を咲かせる。形や生え方がフキに似ており、茎を醤油で煮染めて伽羅蕗(きゃらぶき)という佃煮にしたりするので、分類学上は別種の植物なのだが、「艶のあるフキ」と名付けられた。  自然界に花の少なくなる初冬から盛んに咲き始め、艶のある緑葉が力強さを感じさせるからであろう、縁先のつくばいや庭石のそばなどによく植えられている。芝居で言えば名脇役といったところである。  派手なようでいて地味だから、普段はついつい見過ごしてしまう。しかし、黄色い花がふと目にとまると、あたりがにわかに明るく温かくなるような感じがする。丈夫な植物で、気づかぬうちに子株を増やしてずいぶん広がっている。そうか、これを植えてもう五年たっているのだ。この五年間ずいぶんいろいろな事があったなあと思う。しみじみとした情趣の伝わる句である。(水)

続きを読む