冬浅し旅の装ひ決めかねて         岡田 臣弘

冬浅し旅の装ひ決めかねて         岡田 臣弘 『この一句』  句会で、「装ひ」という語は女性的な感じだね、という声が聞こえたが、男性が使って悪いということはない。作者は吟行へ出かける前に、着て行くものや着替えのものを選んでいるのだ。十月の末だから秋物か冬物かで迷うところだが、行き先が東北だから、なおさら難しくなる。奥さんから「そんなに散らかして」と叱られたそうだ。服選びに考え込む作者の顔が浮かんでくる。  「冬浅し」の句を作ってみて、難しい季語だと実感した。「冬に入る」「冬温し」といった季語に比べるとイメージが定まりにくく、取り合わせの相手がみつかりにくいのだ。ところがこの句は日常にありがちな、ごく普通のことを配して、何とはなしの気ぜわしさを感じさせた。  吟行の作ではない。その後の句会の兼題「冬浅し」の案を練っているときに、この句が浮かんだと思われる。まず兼題が頭の中にあり、次に旅の準備が浮かんで、二つのことが重なったのだろう。兼題だけでも、体験だけでも、なかなかこうはいかない。双方の結びつきの重要さを思い知る。(恂)

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