快速はもろこし地帯突き抜ける     藤村 詠悟

快速はもろこし地帯突き抜ける     藤村 詠悟  『季のことば』  俳句をやる人の中には「モロコシ」(唐黍、蜀黍)と「トウモロコシ」(玉蜀黍)は同じものと思っている人がいるかも知れない。「日本大歳時記(講談社)」などの歳時記では、「モロコシ」を玉蜀黍(秋の季語)の傍題とし、解説でも両者を同じものとみなしているからだ。それにモロコシにもトウモロコシにも「トウキビ(唐黍)」という同じ別称があるので、余計ややこしいことになる。  実際のところ、両者は同じイネ科ながら全く別の穀物である。トウモロコシについては誰もがご存じの通り。一方のモロコシは、年配の方には懐かしいコーリャン(高粱)のことで、箒状の穂に数千粒ものも実を稔らせる。歳時記によってはこれを「高黍(たかきび)」と呼び、秋の季語としている。  作者によればこの句は中国東北部の風景だという。中国では高粱は主要穀物に数えられ、大陸北部の人々が好む「白酒(ばいちゅう)」の原料になる。耕作地はもちろん広大で、畑というより、「地帯」と呼ぶ方が相応しい。大陸ではいま、見渡す限りの高粱畑を快速列車が突き抜けていく。(恂)

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