霧晴れて伊良湖岬へと大漁旗   岡田 臣弘

霧晴れて伊良湖岬へと大漁旗   岡田 臣弘 『この一句』  伊良湖岬(いらござき)は愛知県豊橋市から太平洋に突き出した渥美半島の先端にある。向い側の知多半島と両腕で抱えるように三河湾を囲んでいる。夜間照明を当てて菊に日照時間の長短を錯覚させ、開花時期を人工的に操作する電照菊の栽培で有名な、豊かな農村地帯である。潮の流れの速い伊良湖水道、そこを通る船舶の安全を守る伊良湖岬灯台、島崎藤村の「流れ寄る椰子の実ひとつ・・」で有名な恋路ヶ浜など、風光明媚な所なのだが、電車が半島の付け根までしかなく、後はバスという足の便の悪さから、未だにのんびりとした風情を残している。芭蕉は罪を得てこの地に流された愛弟子杜国をなぐさめにここまで足を伸ばし、「鷹一つ見付けてうれしいらご崎」と詠んだ。  掲出句は名古屋勤務が長かった作者の思い出であろう。複雑な潮流の渥美半島から紀伊半島沖の海は絶好の漁場で方々から漁船が集まる。霧が晴れた朝方、大漁旗を掲げた船が続々と伊良湖港目指してやって来る。勇壮で晴れ晴れとした感じをうたい上げた。(水)

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