音も無く風化重ねし終戦日    野田 冷峰

音も無く風化重ねし終戦日    野田冷峰 『この一句』  風化とは岩石などが風雨などによって、崩れていく現象。しかし一般的には人の記憶や心のありよう示すことが多く、この場合は「歳月によって風化する」と言うべきだろう。上掲の句は終戦日に対する人々心の風化を「音も無く」と表現した。確かにその通りで、風化は知らぬうちにどんどん進んでいく。それに気づかされるのが終戦日だが、「風化したなぁ」と嘆きつつ年を重ねていくことになる。  則天武后に関する取材で、洛陽周辺に残る唐の時代の石碑を調べたことがある。千数百年前の石碑だから、風化が激しく、刻まれた文字はほとんど崩れ去っている。現地の研究者は「石碑に真実が残っている」と語っていた。後の歴史書の多くには、為政者の都合のいいような改竄が行われているという。  では、石碑が読み取れなくなると真実の歴史は消えてしまうのか。研究者は「大丈夫だ」と言う。その碑文を基に書いた歴史書があり、石碑から直接写し取った拓本も残されているからだ。第二次大戦でいえば戦争体験者の言葉が「石碑の文字」にあたる。われわれが最も大切にしたい「碑文」である。(恂) *          *  当欄、先週の担当者(水)氏が、8月14日(日曜日)から「終戦日ミニ特集」を続けた。今週担当の私(恂)もそれに倣い、終戦日の句を続けて紹介することにする。

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