終戦日父風呂に入れ背を流す   澤井 二堂

終戦日父風呂に入れ背を流す   澤井 二堂 『この一句』  いわゆる戦後派世代の人が詠んだ「終戦記念日」俳句である。苦しかった敗戦直後のことをおぼろげに知っている。さらに親や先輩から聞かされたり、本で読んだりして知識としては十分蓄えている。しかし終戦記念日という季語を突きつけられて、さあ詠めと言われても、なかなか実感が湧かない。  病を得て身体の自由が利かなくなった父親と一緒に入浴する。背中を丁寧に洗ってあげる。父親は黙ったままだが、とても気持が良さそうだ。あれほど力強く、仰ぎ見る存在だった父親が、今ではこんなにもすがれてしまった。オヤジは文字通りこの身体を張ってあの過酷な時代をくぐり抜け、我々家族を守ってくれたのだなあと思う。  「父風呂に入れ背を流す」という叙述にもう一工夫あって然るべきではないかと思いながら、一方ではこの素朴で素直な詠い方がかえってしみじみとした感じを表しているのだとも思う。この句は今後、「終戦記念日」「敗戦忌」という季語を詠み継いで行くに当たって、モデルとなる句なのではないか。(水)

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