数へたる南瓜の雌花終戦日   大倉悌志郎

数へたる南瓜の雌花終戦日   大倉悌志郎 『この一句』  戦中戦後を生き抜いた人の思い出の中心はなんと言っても「食糧難」である。油を搾り取ったあとの大豆粕、小麦粉を取った粕のフスマ、米糠、澱粉滓、芋の蔓、タンポポ、ハコベ、アカザ、イタドリなどの雑草、イナゴ、バッタ、蛙、ザリガニ、蛇、雀、烏・・食えるものは何でも口にした。  どの家も庭を菜園にして、素人にも簡単にできるサツマイモと南瓜を植えた。南瓜は威勢良く茂り、黄色いラッパ型の花を次々に咲かせる。花の尻に小さな丸い実を着けているのが雌花。これが貴重だ。早朝、雌花の蕊に雄花の花粉をつけてやる。実は徐々に大きくなり、8月半ばから次々に収穫できる。サツマイモも収穫期に入り、そうなると食卓は毎日南瓜とサツマイモ。そのせいか七十歳以上には「この二つは見るのも嫌だ」という人もいる。  この句も昭和20年の敗戦前後の情景を詠んだものだ。句会では「終戦日南瓜の雌花数へをり」とすれば、今日の優雅な日曜園芸風景となり、「あの日」をしみじみ思う様子が表れるのではないか、といった意見も出た。(水)

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