フランスの大きな茄子に驚けり   片野 涸魚

フランスの大きな茄子に驚けり   片野 涸魚 『この一句』  全く技巧を凝らさない、というよりは意識して一切の技巧を排除した詠み方である。ただただ、フランスの茄子が大きいことに驚いたというのである。はじめてフランスに行って茄子を見たときの新鮮な驚きが伝わってくる。  日本にいれば茄子が無性に食べたくなることなど滅多にないのだが、不思議なもので、外国に暮らすとあの素朴な茄子の味を思い出したりする。そこでマルシェ(市場)に出かけた。あまりの大きさに度肝を抜かれた。これでは茄子だけで腹が一杯になってしまう。  確かに欧米の茄子は大きい。赤ん坊の頭くらいのはざらである。明治時代にアメリカから向こうの茄子が持って来られて、当時の日本人はこの作者以上にびっくりしたに違いない。その後、やや小ぶりに改良され「米茄子(べいなす)」と名付けられて在来の茄子に仲間入りしたが、やはり大きくて漬け物や煮物には向かないから、しょっちゅう食べる家はなく、日本ではあまり流行らない。  やはり茄子は小ぶりできゅっと締まり、黒紫に光る日本の茄子がいい。(水)

続きを読む