おそまきに茄子のうまみ分かり出し   藤村 詠悟

おそまきに茄子のうまみ分かり出し   藤村 詠悟 『この一句』  昔は「なすび」と呼ぶのが普通だったらしい。いまでも地方によってはナスと言わずナスビと呼んで親しんでいる。インド原産で日本には中国経由で奈良時代に伝わったらしいが、以来、日本人独特の念入りな栽培と改良で、数え切れない種類の茄子が生まれた。長卵形が一般的だが、丸いもの、長さが20センチ以上になるもの、握り拳のようなものなどいろいろある。煮物、焼き茄子、揚げ物、炒め物、塩揉み、塩漬け、糠味噌漬けと、夏から秋も深まるまで、これほど重宝する野菜も少ない。  ところが、茄子なんてどこが美味しいんだろうと言う人がいる。ことに子どもはピーマンとともに嫌う傾向がある。近頃の茄子はほとんどアクがないが、生で食べるとかすかな苦味やえぐ味がある。これが嫌われる原因かも知れない。  しかしかすかなアクは逆に深味をもたらす。ここに旨味を感じるのは年輪を重ねた証拠とも言える。昔は茄子が嫌いだったんだがなあと独り言をつぶやきながら、鴫焼きで一杯やっている作者が目に浮かぶ。(水)

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