紫陽花や傘を広げて写さるる      植村 博明

紫陽花や傘を広げて写さるる      植村 博明 『この一句』  写真を写されているのは間違いなく女性である。差しているのは雨傘か日傘か。どちらもあり得るが、紫陽花も写すのだから雨傘が似合うに違いない。女性は一人でもいいが、複数と見たい。「広げて」とあるから、「せっかく写真に撮るのだからだ」と、その場でみんなが色鮮やかな雨傘を広げたのだ。  初めは句の全体像がちょっと掴みにくい、と思った。まず作者の立場がはっきりしない。女性なら、作者たちが写されていることになるが、男性の作なのだから、傍観者の立場で一句にまとめたと考えるべきなのだろう。「傘を広げよう」と提案したのは写す人か、写される女性たちなのだろか、とも考えた。しかしこんな詮索は無用、ということが、やがて分かってきた。  女性たちが紫陽花と並んで写真を撮られている、という雰囲気そのものがこの句のテーマであった。それ以外のことは全く意味がなく、むしろ何も分からない方がよさそうだ。そう気付いて一句を見直してみた。すると俳句の中から、女性のにぎやかなおしゃべりや笑い声が聞こえてきたのである。(恂)

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