物置の奥に寝ていた竹夫人   高橋 淳

物置の奥に寝ていた竹夫人   高橋 淳 『季のことば』  これはまた非常にめずらしい季語を見つけたものである。「竹婦人」とも書き、「ちくふじん」と読む。細い割り竹や籐を長さ一メートルほどの細長い籠状に編んだもので、暑苦しい夏の夜にこれを抱きかかえて寝ると涼しくてまことに気持が良い。もちろん昼寝にだっていい。  江戸時代に大いにはやり、戦前まではどこの家庭にも転がっていた。一般には「抱き籠」と呼ばれていたようだが、しゃれっ気たっぷりな人たちが「竹夫人」と呼び習わし、夏の季語として盛んに詠んだ。しかし今ではかなりの年配でも「ちくふじん」と言われて「あああれか」と思い浮かべられる人はほとんどいない。だが近頃は抱き枕というのが結構人気を呼んでいるようだから、竹夫人も現代的装いで再登場するかも知れない。  作者は久しぶりに故郷に帰り、大掃除の手伝いか、捜し物かで物置を開けたのだろう。「なんだいこれは」ということになって、老親から故事来歴を聞かされ、面白がっているのだ。(水)

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