万緑の一隅にあり文学館   今泉 而雲

万緑の一隅にあり文学館   今泉 而雲 『合評会から』(番町喜楽会) 楓子 文学館がぽつんとある。もしかしたら上野公園みたいな所かも知れませんが、万緑の中の文学館というのが雰囲気がありますね。 塘外 これはそう大きな建物ではないんだと思います。森の片隅に文学館がある。万緑に圧倒されるような気持が、くすんだ文学館でなんとなく解放されるような感じがあります。           *  一見まことに素っ気ない句である。森の片隅に文学館が建っているというに過ぎない。しかし繰り返し読んでいるうちに、気持が落ち着いてくる。不思議な句だ。楓子、塘外両氏の読みもなかなか深い。  作者によるとこれは目黒区駒場公園の日本近代文学館なのだという。加賀百万石の殿様、前田侯爵邸の跡地が宏壮な洋館・和館とともに公園となり、その片隅にぽつんと建つのが文学館。なるほど「万緑の一隅」である。歴史の重みと一緒に、やすらぎを覚える。(水)

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