ラムネ抜く昭和の遠音響きけり   加藤 明男

ラムネ抜く昭和の遠音響きけり     加藤 明男 『季のことば』  夏の季語「ラムネ」の存在感はなかなかのものだ。同じ夏の季語のコーラ、ジュース、クリームソーダなどと比べると、消費量では劣っているはずだが、俳句につくられる数からいえば、他を圧しているのではないか。瓶の口のラムネ玉を「ポン」と押して開栓する心地よさ。あの音によって爽快な季節感が生まれるからだろう。  明治の初年、日本に登場して以来、長らく庶民的な飲み物として人気を集めていたが、戦後になってコーラ、ジュースなど飲料が多彩になり、めっきり影が薄くなった。とはいえ絶滅したわけでなく、小さな盛衰を繰り返しながら生き残り、最近では日本食ブームに乗って輸出されたりしている。  公園の茶店などにいると、ポン栓を抜く音が聞こえてきて、あっラムネだな、と懐かしく思う。確かにあれは「昭和の遠音」である。しかし「降る雪や明治は遠くなりにけり」(中村草田男)のような、失われたものへの感慨とは違う。簡単にいえば、失われかけながら、復活してくるものへの懐かしさなのだろう。われわれにとって昭和とは、そういう時代なのかも知れない。(恂) この句の作者は当初、誤って「高橋 淳」としてしまいました。正しくは「加藤 明男」でした。高橋さん、加藤さんにたいへんご迷惑をおかけしました。お詫びを申し上げ、訂正致します。(恂)

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