サマータイム家で眺める夏の月   山田 明美

サマータイム家で眺める夏の月   山田 明美 『この一句』  「サマータイム」と「夏の月」ではもろに季重なりではないかと文句を言う人が出るに違いない。しかし私は句会でこの句にあえて一票投じた。なんとも中途半端な作者の気分が実にうまく表されていると思ったからである。  大津波による福島原発事故以来、各地の原発が運転休止に追い込まれ、電力不足が深刻になっている。節電を呼びかけられた企業はサマータイムを導入、「就業時間は午前8時から午後4時」などという会社もある。  しかし午後4時に「さあお帰りなさい」と言われたってどうしようもない。仕事の相手先には平常通りの勤務形態のところも多く、さっさと帰りにくい事情もある。しかし4時を過ぎるとエアコンも明かりも消されてしまう。「居残り」はいちいち上司の許可を得なくてはならない。それも面倒だから帰る事にする。けれど一年中で最も日が長い季節、寄り道しながら帰るとようやく月が出た。まさに「家で眺める夏の月」である。滑稽句というものは作為を弄さず、こういう無意識のうちに生まれたものが一番だとつくづく思う。(水)

続きを読む