節電の断り書きや駅薄暑     嵐田 啓明

節電の断り書きや駅薄暑     嵐田 啓明 『この一句』  いまの首都圏はせいぜい「薄暑」であり、日によっては「梅雨寒」という状況である。JRや地下鉄の駅へ行っても、「ああ、節電中なのか」と軽く受け止めることができるのもそのためだろう。この句はそんな都会の風景をあっさりと淡彩風に描いているが、じっと見つめていると、別の画像が見えてくるのではないか。油絵具を塗り重ねたような、息苦しいほどの状況が――。  猛暑になったら、と考えてみる。電力供給は綱渡りになるはずだ。電車の本数を減らす、車内温度をさらに高めに設定する、長い階段もエスカレーターは動かない、というようなことになったらどうだろう。満員の電車内や駅構内で乗客の不満爆発、ということにもなりかねない。  震災直後と比べると、人々の態度は明らかに違ってきた。当初は風評被害や買い溜めの当事者にもなっていたが、最近では被災地応援の売り出しに大勢の人が集まるようになった。復興への気持ちが一つになってきて、協力する、辛抱する、という心構えが一般化してきたように思われる。しかし間もなく真夏日、猛暑日がやってくる。その時、どんな「震災俳句」が生まれてくるのだろうか。(恂)

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